ゲートシティ大崎について

大崎駅東口第2地区第一種市街地再開発事業として、1984年に再開発準備組合設立後15年の事業期間を経て1999年2月10日にグランドオープンしました。
この大規模な再開発についての全体計画をご説明いたします。

都市デザイン

まちをつくる

「ゲートシティ大崎」は、民間組合施行による市街地再開発事業であり、規模においても山手線の内側では20世紀最大のものとなっています。機能的には民間施設としてのオフィス/商業施設/住宅/清掃事務所/工場/変電所/多目的ホール/地域冷暖房施設/公開空地があり、また公共施設として道路/公園/河川管理用通路を含むなど、複合的な内容を整備する大事業でありました。
また、このような規模の大きさはそのまま周辺環境への影響の大きさとなるため、事業を実現させるためには周辺に居住される方々の協力が欠かせないものでした。そこで、影響を皆無にすることは不可能ですが、できる限りの要望を具体化するため、設計検討を行いながら、周辺環境への配慮を最重要課題として取り組みました。開発方針の決定は、すべて個人・法人を含めた組合員全員の合意の上で、民主的な手続きによって行われています。結果、この再開発組合の運営方法は、住民参加という面でも、これからのまちづくりの良き先例となりました。
「ゲートシティ大崎」は、規模、内容、周辺環境への影響、そして事業運営方法と、どれをみても都市と呼ぶにふさわしいスケールの大きさと複雑さを持ち合わせています。これらの問題に正面から取り組んだ「ゲートシティ大崎」の設計は、まさに貴重な、都市デザイン実践の記録なのです。

配置方法

まちのレイアウト

大崎駅東口地区は、「大崎ニューシティ」の第一地区と第二地区で構成されており、大崎副都心の中核地区として業務商業の中心になることが期待されていました。
そこで、多くの人が利用するオフィスと商業施設は、「大崎ニューシティ」と連携したにぎわいを創り出すためにできるだけ駅の近くに配置し、JRの利用者が大半を占めるこのまちの人の流れをスムーズに導くことに努めました。また、大きな建物をできるだけ敷地南側に配置したのは、北側近隣に居住される方々への、日照・景観上からの配慮の結果です。住宅棟「サウス・パーク・タワー」は、公園と連続した緑豊かなオープンスペースに囲まれた位置に、「清掃事務所」は、山手通りに面し、車両のアクセスが良い従来と同じ場所に配置しました。さらに事務所を併設した「工場棟」は、資材の搬出入を個々に独立して行えるよう、区道1号線と8号線の交差する角地に配置し、効率の良い工場運営を目指しました。
建物レイアウトは、まちの骨格を決め、周辺環境との調和をはかりながら安全で快適なまちづくりを実現するために、たいへん重要な課題でした。

都市景観

まちを彩る

「ゲートシティ大崎」が位置する品川・大崎周辺は羽田空港に近いことから、建築物の高さに制限があり、137mが限度になっています。そのため、開発規模がいくら大きくても、新宿にみられるような200mを超える超高層ビルの建設は不可能です。
この137mという高さは、現代の東京にあっては、際立って目立つ高さではありません。このため「ゲートシティ大崎」の建物デザインにおいては、高さを追究するのではなく、周辺環境に調和した都市景観を創り出すことを目指しました。
「ゲートシティ大崎」の敷地は、JR山手線大崎駅を中心とする軸線と、前面の山手通りに沿った軸線が45度で交差した位置にあります。山手線の軸は、隣接する「大崎ニューシティ」のビル群や、駅西口のソニー/明電舎の敷地において練られていた開発計画などを考慮した都市景観上、重要な軸線です。一方、「ゲートシティ大崎」の敷地から検討すると、前面の山手通りの軸に合わせることが土地利用上合理的であり、山手通りの歩行者から観た街並みとしての景観としてもこちらの方が優れています。広域の都市景観と街並みの景観を調和させること、同時に敷地北側の近隣住環境にも調和させることが、建物デザインの基本条件となりました。

四角形、八角形、十字形

「ゲートシティ大崎」は、建物の高さを低くすることにより平面的な広がりが生まれ、基準階の面積も大きくなりました。基準階が広ければ、四角形でなくても使いやすい事務室をデザインすることができます。規模の大きい「ゲートシティ大崎」ならではのデザインが可能になったのです。
さらに四角形、八角形、十字形を組み合わせた建物デザインは、基本条件を同時に解決しました。高さを低くすることで日影の範囲が狭くなり、また中層から上部は角を取った円に近い八角形とし、下層の四角形も角を取ったので、日影、圧迫感、風害の悪影響を大幅に軽減することができました。
そのうえ、八角形をさらにそぎ取った上層の十字形は、近隣への悪影響を小さくするとともに、山手線の軸に合ったスカイラインを形成し、「大崎ニューシティ」と調和した都市景観を創り出しています。

自然石とガラスの外観

形態の変化をデザインの主題におき、全体としてまとまりが感じられるように、またツインタワーの相乗効果が発揮されるように、外壁面には石とガラスによる明解なデザインを目指しました。
低層部分は、巨大さが強調されないように、派手さのない落ちついたグリーングレーの花崗岩の壁とハーフミラーガラスの窓が、水平方向に連続しながら積み重なる構成としました。そして中層につながる部分は、窓の高さを上げ、上へと伸びる変化によって上昇感を出しています。花崗岩は窓の下の一部に光沢のある磨き仕上げを施すことでアクセントをつけ、深みのある外壁としています。
高層部分は全面ハーフミラーガラスで、下から見上げたときに空を映して建物の存在感を和らげ、巨大さを軽減しています。
中層部は、上層と下層を連続させるように、横に連続した全面ガラスを組み合わせています。
こうして大崎駅東口地区の新しいランドマークとして、東京の南のゲート「ゲートシティ大崎」を象徴するツインタワーが誕生したのです。

都市の魅力、「パブリックスペース」

多くの人々が自由に利用できる質の高い「パブリックスペース」は、都市生活を楽しむうえで欠かせないものです。「ゲートシティ大崎」の最大の特徴はこの「パブリックスペース」にあります。
「ゲートシティ大崎」の連絡通路を通って建物内部に入れば、そこには石畳の大通りや広場が「パブリックスペース」として広がっています。この「パブリックスペース」は、ムービングウォーク、エスカレーター、シースルーエレベーターによって立体的に連続しています。
東西オフィスタワーは、この「パブリックスペース」に庇を出して、玄関を構え、ゲートシティホールは、ギャラリーの奥にあります。
さらに進むと、南仏プロヴァンス地方の雰囲気を再現した「パブリックスペース」がしつらえてあります。噴水のある屋上広場、アーチの窓が印象的な庭、美しいカスケードが光のなかでゆらめくサンクンガーデンなどです。
そして「パブリックスペース」は、「ゲートシティ大崎」の中心であるアトリウムの広場へと続いています。この広場は「パブリックスペース」のなかでも最大のハイライトとなります。建物周辺にはさらに、エントランスプラザ、ノースガーデンと呼ばれる広場や、高さが15mにもおよぶ山桜の巨木、深山の趣をもった日本庭園などの「パブリックスペース」が広がっています。

都市基盤施設

快適で潤いのある舞台づくり

再開発事業によって誕生する"まち"が"都市"として機能するために、そして人々にとっては快適で潤いのある活動の舞台でありつづけるために、充実した社会資本の整備は欠かせません。

道路

美しい都市は美しい道によってつくられます。歩行者も自転車も安心して通れる幅の広い歩道は、自動車に奪われた都市の快適さを取り戻す第一歩です。
目黒川沿いの区道8号線は、「大崎ニューシティ」に合わせて、桜の並木道として整備しました。
「大崎ニューシティ」との間を通る区道1号線には敷地の一部を提供し、街路樹のグリーンベルトと合わせて幅4メートルの歩道としました。桜と常緑の山桃を植えたことで、ビル風の軽減にも役立っています。 山手通りは建物の壁面線を7.5m後退させ、幅5mの歩道を確保しました。電力線などは地中化され、銀杏の街路樹はのびのびと枝を広げています。

目黒川の護岸工事によって掛け替えられた森永橋は、「ゲートシティ大崎」への北の玄関にあたります。この親柱を「ウエルカムゲート」としてデザインしました。

公園

品川区の目黒川緑道計画に従い、川に面する場所に広さ1400m2の「居木橋公園」を新設しました。公園には柵などを設けずに、周りのオープンスペースと一体化させ、起伏のある緑地のなかに遊具を配置しています。また、江戸時代に品川沖に姿を見せた鯨にちなんだ水飲みのオブジェを設置しました。

歩行者用連絡通路

大崎駅を中心とする歩行者空間のネットワークを整備するために、幅の広い連絡通路を整備しました。

地域変電所

周辺地域への貢献のひとつとして、将来にわたって安定した電力を供給するために、地域変電所を設けています。地上部分はオープンスペースとして有効に活用できるよう、地下4階に設置しています。

地域冷暖房施設(DHC施設)

敷地内に空調用/給湯用の熱源を供給するため、電力方式の地域冷暖房施設を設置しました。
この施設では深夜電力を利用して、1万トンの水槽に蓄熱します。変電所と同様に地上部分をオープンスペースとして有効活用できるよう、地下3階に設置しています。また、クーリングタワーはビルの最上階の屋上に配置しました。

全体設備計画

21世紀にふさわしい都市環境を

「ゲートシティ大崎」に集まり、活動する人々にとっては、つねに快適な都市環境が維持されることが基本です。そこで、環境や保全、将来の更新をも視野に入れた設備の導入をはかりました。また、競争力のあるオフィスを提供するために、利便性が高く、維持費の低い(省エネルギー、省力化、高耐久性)設備計画を積極的に採用するとともに、将来の設備更新を容易にすることにも配慮しました。
また"まちづくり"の一環として、周辺環境も含んだ新しい都市景観を生みだすため、敷地周辺道路の無電柱化や区道整備に協力しました。

徹底した環境対策と負荷の軽減

大都市の水不足が大きな社会問題になっているなか、大規模な再開発事業では徹底した対策が求められています。そのため雨水利用、節水器具の採用、下水再生水の利用(東京都下水道局供給の浄化再生水)により、上水道の負荷軽減と都市単位の水リサイクルをはかりました。
また、地球温暖化など、世界的なエネルギー抑制気運に応えるため、省エネルギーにも十分に配慮しました。例えば、空調エネルギーに伴う負担軽減として、VAV、VWV方式の採用。空調ポンプ(全台数)・空調機・ウォールスルーなどのインバータ制御などによる各種省エネルギーシステムの採用。DHCの導入と大容量蓄熱槽使用による昼間のピークカットと、熱回収可能なヒートポンプシステムの採用。さらに、電気設備としては高圧配電方式による配電の高効率化やインバータ照明器具の採用など、各種の高効率機器を積極的に採用することによって、総合的なエネルギー消費量の抑制をはかりました。

安全、防災に対する配慮も十分に

大規模な"まちづくり"では、地震や火災時の対策にも十分な配慮が必要です。
「ゲートシティ大崎」では、非常時における地域の緊急避難施設として利用されることも考慮して、建物の耐震性向上とともに、大規模受水槽(上水200t×2)や散水受水槽(非常時の生活用水利用290t)を設置しています。

最適・効率を目指した各種設備計画

電気設備計画

「ゲートシティ大崎」は用途の異なる施設が同一敷地内にあります。そのため関係官庁・東京電力・NTTとの協議により、それぞれを別引き込みとし、防災設備を含めてすべて個別の電気設備としています。
業務商業棟の地下部分には、DHC施設と東京電力の地域配電用変電施設が設置されています。DHC施設は受変電設備を業務商業棟の特高受変電設備と設備共用することで、施設費・維持費の軽減をはかっています。

空調設備計画/DHC計画

「ゲートシティ大崎」では、専用の地域冷暖房プラントを業務商業棟地下3階のほぼ中心に設置し、ここから「業務商業棟」「清掃事務所棟」に空調用冷水・温水を供給。また、「清掃事務所棟」「住宅棟」へ給湯しています。
熱源プラント用の冷却塔は東タワー屋上に設置し、蓄熱槽(10,400t)はウエストタワー地下4階に設置。棟間を結ぶ配管ルートは、維持管理が容易なトレンチ方式としました。 また「事務所併設工場棟」は、建物の使用形態からDHC供給に適さないため、個別の空冷ヒートポンプパッケージ式としました。

衛生設備計画

上水(東京都水道局供給)、再生水(東京都下水道局供給)、ガス(東京ガス供給)、生活排水(東京都下水道局)は、それぞれの建物ごとに本管接続を行いました。(なお、再生水は「業務商業棟」にのみ導入しています)。

雨水排水計画

雨水は敷地全体で一括処理を行う計画となっています。この区域は下水道処理区域に入っていないため、現時点では雨水を公共下水道に放流することができません。従って大規模な雨水貯留槽を設け、当面は目黒川に放流し、将来下水道が整備された後に下水道に切り替えて放流が行える計画としています。

電力電話設備引込内容

 
電力引込
業務商業棟
66KV ループ受電 業務商業棟(業務用電力) DHC(特別高圧電力)
住宅棟 借室/共用部
22KV 2回線スポットネットワーク受電 (業務用電力)/6.6KV 1回線受電
清掃事務所棟
6.6KV 1回線受電 (業務用電力)
事務所併設工場棟
 日刊競馬新聞社
 盛輪社モータース
 藤島銘鈑製作所
6.6KV 1回線受電 (業務用電力)
    低圧受電 (低圧電力)
    低圧受電 (低圧電力)
独立店舗
低圧受電 (低圧電力)
公衆便所
低圧受電 (低圧電灯)
品川区公園
低圧受電 (低圧電灯)

建物概要

所在地
東京都品川区大崎一丁目11番 1号及び2号
交通
JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・りんかい線「 大崎」 駅徒歩1分(駅から敷地境界まで)
竣工
1999年1月
総合企画
三井不動産(株)
設計監理
(株)日建設計
施工
西工区:大成・熊谷・清水・竹中・東急・安藤建設共同企業体
東工区:鹿島・三井・戸田・前田工業・住友建設共同企画
構造
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
階数
地上24階 地下4階 塔屋1階
高さ
98m
建築面積
18,209.39m²(5,508坪)
延床面積
291,883.62m²(88,295坪)
事務室総貸付面積
155,115.74m²(46,922坪)
エレベーター
各タワー:乗用27人乗り×18基(3バンク×6基)、非常用3基(荷物用2基含む)、駐車場用2基
駐車場
665台(月極契約用342台・一般時間貸用239台・管理用その他84台)